今回は、
残業手当の請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
3 本件歩合給に各種の割増賃金(残業代)が含まれているとして、基礎給がいくらになるのかが問題となる。この点については、四二パーセントの歩合についてはうち三九パーセントが、四五パーセントの歩合についてはうち四〇パーセントが、四六パーセントの歩合についてはうち四一パーセントが基礎給部分と推定されるが、正確な逆算はできない。しかし、これは、本件歩合給に各種の割増賃金(残業代)が含まれていないということではなく、本件歩合給には各種の割増賃金(残業代)が含まれているものの、基礎給を正確には確定することができず、ひいてこれに基づく割増賃金(残業代)も正確には確定できない状態にあるというのが実態である。そして、右の推定される基礎給部分は、他の同規模のタクシー会社の基礎給と比較しても均衡を失するほど低額とはいえず、むしろ同等以上であるから、原告らには、本件歩合給によってすでに各種の割増賃金(残業代)が支払われているというべきである。
四 抗弁に対する認否
抗弁は争う。所定外及び深夜の各割増賃金(残業代)は、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算したものであり(労働基準法三七条一項)、右通常の労働時間又は労働日の賃金(以下「通常時間の賃金」という。)の計算額を算定するについての基礎とすべき金額は、出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額である(同法施行規則一九条一項六号)。したがって、被告が主張するように、水揚高の四二ないし四六パーセントの中に所定外及び深夜の各割増賃金(残業代)が含まれているとすれば、当然通常時間の賃金のパーセント(これを「基礎パーセント」という。)が決まっていなければならない。そして、所定外及び深夜の各割増賃金(残業代)を含めた賃金は、次の計算式で示されることになるが、これによれば、賃金は、所定外及び深夜の各労働時間数によって変動するのであり、水揚高の四二ないし四六パーセントに一定するはずがない。
月間水揚高×基礎パーセント=A
A÷月間総労働時間数=B
賃金=A+B×0・25×所定内深夜労働(残業)時間数+B×0・25×所定外労働時間数+B×0・5×所定外深夜労働(残業)時間数
以上のとおりであって、水揚高の四二ないし四六パーセントという本件歩合給の中に所定外及び深夜の各割増賃金(残業代)が含まれているということは考えられず、一律歩合給制とは、各種の割増賃金(残業代)を支払わないということにほかならない。
第三 証拠〈省略〉
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